本ブログでは、SAP ソリューションにおける統合エントリポイントとして注目される、SAP Launchpad サービスの概要についてご紹介します。
1. SAP Launchpad サービスとは
業務ユーザは、日々様々な分野の大量のアプリやサービスを利用して日常業務遂行しています。その中で生産性や効率性を高めるために重要となるのが、調和のとれたユーザエクスペリエンスと、一貫性や一元化されたアクセスポイントによるUX統合です。それを実現するのが、
SAP Launchpad サービスです。
SAP Fiori UX をベースとした SAP Launchpad (Web) 上に、SAP S/4HANA、SAP SaaS アプリケーション(例. SAP S/4HANA Cloud, SAP IBP)、サードパーティ製サービスを起動するタイルを配置し、
ビジネスアプリケーション群のセントラルエントリポイントを構築することができます。SAPソリューションは、SAP S/4HANA は Dynpro(WebGUI)/WebDynpro/SAPUI5、SaaS 製品群は SAPUI5 などのように多様な UI 技術で実装されていますが、SAP Launchpad サービス上に構築したセントラルランチパッドを介してシームレスにアクセスをすることができます。また、Web ブラウザをフロントエンドツールとすることで、サードパーティ製のアプリケーションへのアクセスも容易にすることができます。
SAP Launchpad 上のコンテンツは業務ロールベースでカテゴリされ、それぞれのページに関連する業務アプリケーションへの起動タイルを配置することができます。ページレイアウトはパーソナライズすることができ、ユーザ自身で利用頻度の高いアプリを上部に配置するなど最適なレイアウトにカスタマイズすることで、より操作しやすいエントリポイントを作りあげることができます。また、SAP S/4HANA 上で提供される SAP Fiori launchpad と同様に、検索、通知、デジタルアシスタント連携などの機能があります。
2. 特徴
SAP Launchpad サービスが提供する主な特徴としては、以下があります。
2.1. クラウド(SAP BTP) 上で開発されたアプリケーションのアクセスポイントを提供
SAP Business Technology Platform 上の開発ツール (SAP Business Application Studio、以下)で開発したSAPUI5 アプリを、直接HTML5アプリケーションレポジトリにデプロイして、SAP Launchpad サービスから実行することができます。
通常、Cloud Foundry 環境上で開発された HTML5 アプリ を起動するためには、エントリポイントを用意するためApplication Routerを作成する必要があります。一方、SAP Launchpad サービスから利用する場合は、Managed Application Router を利用して静的コンテンツの提供、ユーザの認証、URLの書き換えを行うため、個々にApplication Router を作成することなく、HTML5アプリケーションレポジトリに直接デプロイすることができます。
https://blogs.sap.com/2020/10/02/serverless-sap-fiori-apps-in-sap-cloud-platform/
参考)
Managed Application Router:
https://help.sap.com/products/BTP/65de2977205c403bbc107264b8eccf4b/589a2395df2d481393acb1ba2f17eeef....
Standalone Application Router:
https://help.sap.com/products/BTP/65de2977205c403bbc107264b8eccf4b/050d87a61faa4fb88f687abd7bdf16ce....
2.2. 複数のコンテンツを統合
SAP BTP 上で開発されたコンテンツだけではなく、SAP S/4HANAや SAP SaaS アプリケーションなど様々な製品からコンテンツを連携することができます。連携方式としては、マニュアル統合とコンテンツ連携の2種類があり、コンテンツプロバイダにより連携方式が異なります。(最新情報については、
こちら)
1) マニュアル統合
アプリを直接 Launchpad上に追加しアクセスできるように設定することもできます。マニュアルでの統合がサポートされているアプリは以下です。
・SAP S/4HANAオンプレミスにデプロイされているアプリ
・SAP BTP Cloud Foundry環境にデプロイされているアプリ
・SAP BTP ABAP環境デプロイされているアプリ
・SAP SuccessFactorsディープリンク
https://help.sap.com/viewer/8c8e1958338140699bd4811b37b82ece/Cloud/ja-JP/ddb655ae45e44d499f2fa0ce503...
加えて、サードパーティの製品もマニュアルで統合させることができます。
https://blogs.sap.com/2020/09/11/building-a-central-launchpad-using-sap-cloud-platform-launchpad-ser...
2)コンテンツ連携
2.1 で記載したSAP BTP (Cloud Foundry) 上で開発したアプリケーションとの連携の他に、リモートコンテンツプロバイダ (S/4HANA, SAP Business Suite など) からコンテンツを連携することもできます。
コンテンツ連携元でロールを公開し、SAP Launchpad サービスで利用します。SAP BTP へ取り込まれたロールは、SAP BTP 上の Role Collection で管理可能になり、SAP BTP ユーザへ割り当てることで利用することができます。
図) SAP S/4HANA からのコンテンツ連携
図) 複数の オンプレ SAP S/4HANA 環境からのコンテンツ連携
2.3 複数の異なる SAPUI5 バージョンのランタイム環境を提供
通常、SAP S/4HANA などオンプレミス環境上では、SAP Fiori frontend server に含まれている SAPUI5 ライブラリセットを活用して、アプリケーションが表示されています。上位ライブラリを利用するためには、SAPUI5 (もしくは Frontend Server) のアップグレードが必要となり、一つの Fiori Frontend Server に対して複数の異なるリリースの SAP S/4HANA を接続することができません。一方、SAP Launchpad サービスなどSAP BTP上では、すべてのSAPUI5バージョンが用意されており複数のSAPUI5 ライブラリがサポートされています。
詳細は以下のリンクをご参照ください。
Variant for Bootstrapping from Content Delivery Network
https://sapui5.hana.ondemand.com/#/topic/2d3eb2f322ea4a82983c1c62a33ec4ae
Versioning and Maintenance of SAPUI5
https://sapui5.hana.ondemand.com/#/topic/91f021426f4d1014b6dd926db0e91070
3. ユースケース
3.1 インターネット公開
SAP Launchpadサービスはクラウドサービスのため、インターネット経由でアクセスすることができます。オンプレミス環境のコンテンツにたいしても、SAP Cloud Connectorを介してセキュアにアクセスすることができるます。オンプレ環境を直接インターネットに公開する必要はないため、営業担当者がモバイル端末からVPN接続することなくSAP Launchpadサービスにアクセスしたり、取引先などの外部ユーザに一部機能だけ利用させたりしたい場合にSAP Launchpadサービスを介して一部の機能のみを提供することができます。
3.2 リリースの異なる複数のシステム上のコンテンツを統合
一人の従業員が、リリースの異なる複数のSAP S/4HANAにアクセスをしたい場合、これまではシステムごとに異なるエントリポイント (local SAP Fiori launchpad) があるため、ユーザ自身がエントリポイントを切り替えながら操作する必要がありました。SAP Launchpad サービスを介することで、ユーザ自身はシステムやサービスの差異を意識することなく、アクセスすることができます。
例えば、社内ユーザが利用する場合においても、国内SAP S/4HANA システム 1909 と海外 SAP S/4HANA 2020 システム双方へのアクセスが必要な場合などに活用することができます。
SAP Launchpad サービスを使用しない場合
SAP Launchpad サービスを利用する場合
4. 他のサービスとの違い
SAP Business Technology Platform Extension Suite 内の Digital Experience には、他にもいくつかサービスがあります。
https://open.sap.com/courses/cp11-pe/items/3KqPBig4iy7mK88dfZkmbN
4.1 SAP Work Zone
SAP Launchpad サービスと類似する他のSAP BTP サービスとして、SAP Work Zone サービスがあります。SAP Work Zone は、ユーザの生産性とエンゲージメントを向上させるデジタルワークプレイスを構築します。ビジネスアプリ、プロセス、情報などへのアクセスのエントリポイントとなり、ウィジェットやUI統合カードを利用し構築することができます。
この SAP Work Zone においては、アプリケーション起動の機能は SAP Launchpad サービスを利用しています。
図)SAP Launchpadサービス
図)SAP Work Zone
また、以前 SAP Cloud Portal サービスを Neo 環境上で提供させていただいていましたが、今後はSAP Cloud Portalサービスではなく、SAP Work ZoneあるいはSAP Launchpad サービスの利用を推奨しています。
それぞれの詳しい説明は以下をご参照ください。
SAP Work Zone:
https://help.sap.com/viewer/product/WZ/Cloud/en-US
SAP Cloud Portalサービス:
https://help.sap.com/viewer/8422cb487c2146999a2a7dab9cc85cf7/Cloud/ja-JP/20bc06451c0a46b39cd4166cb24...
4.2 SAP Mobile Start
SAP Mobile Startというサービスが新しくリリースされ、ユーザがデスクトップ以外にモバイルからセントラルエントリポインを利用することができるようになりました。SAP Launchpad サービスを利用するユーザは、利用することができます。モバイル表示に対応するUXとなっており、アプリケーションをホーム画面上にウィジェットとして表示できたり、Spotlight Searchでアクセスすることができます。
SAP Mobile Start自体には初期状態ではコンテンツが何も存在しませんので、SAP Launchpad サービス上でのコンテンツフェデレーションかマニュアル作成かのいずれかでSAP Mobile Startのコンテンツを作成します。SAP Launchpadサービスのコンテンツ連携することで、バックエンドサービスからの通知を表示し、重要な情報を早期に知らせ迅速に対応することが可能になります。
SAP Mobile Start詳細はこちらのブログをご参照ください。
https://blogs.sap.com/2021/09/01/sap-mobile-start-the-new-native-entry-point-to-access-applications-...
5.最後に
ご紹介しましたように、SAP Launchpad サービスはユーザの業務の効率化・生産性向上に焦点をあてたUXを提供しています。アプリやサービスにセントラルエントリポイントから簡単にアクセスでき、ユーザがより重要なことに注力できる手助けとなりますので、ぜひご活用いただきたいです。
なお、次回は SAP Launchpad サービスの実際の使い方などをご紹介させていただく予定です。
参考リンク)
SAP Launchpad Service
オンラインヘルプ:
https://help.sap.com/viewer/product/Launchpad_Service/Cloud/ja-JP
チュートリアル:
https://developers.sap.com/mission.cp-starter-digitalexp-portal.html