はじめに
SAP Analytics Cloud for Planningは、SAPが提供しているクラウドベースの計画ソリューションです。このブログポストでは、SAP Analytics Cloud for Planningを利用した計画データの立案例、SAP S/4HANAシステムとのデータ連携、迅速かつ簡単な開始ポイントとしてのビジネスコンテンツの例について、ご紹介します。
SAP サービスまるわかり インテリジェントエンタープライズ プロジェクト編
第 12 回 SAP Analytics Cloud for planning を活用した最新の予算管理を解説!
SAP Analytics Cloud for planning と SAP S/4HANA を連携した会計予算管理ソリューションのご紹介の内容をベースとしています。
会計予算管理ソリューションの変遷とSAP Analytics Cloud for Planning
SAPの会計予算管理ソリューションは、これまで技術の進化とともに移り変わり、SAP Analytics Cloud for Planningは最新のソリューションとなります。
SAP R/3、SAP ERPのPlanningプロセッサ(KP06,KE11)と評価機能(KEPM)にはじまり、SAP SEMシステムの計画、シミュレーション機能(BPS)とWeb-Interface ビルダ、SAP BWシステムの統合計画(IP)機能とSAP HANAインメモリPlanning、SAP BW-IPとBPCが統合されたBPC Embedded、SAP S/4HANAとBPCが統合されたBPC Optimized for S/4HANAまで、オンプレミス環境の計画ソリューションは進化してきました。そして、クラウド環境の計画ソリューションとして、SAP Analytics Cloud for Planningがリリースされました。
現在、SAPの会計予算管理ソリューションには、オンプレミスあるいはマネージドクラウド環境に5種類、クラウド環境に1種類(SAC for Planning)が提供されています。今後の方向性は、以下のとおりです。
- オンプレミスの計画ソリューションでは、BPC optimized for S/4HANAは引き続き、SAP S/4HANA オンプレミス上のリアルタイム計画ソリューションとして利用可能。また、スタンドアロンのオンプレミスソリューションとしてはBPC for BW/4HANA(=BPC11)が推奨。
- SAP S/4HANA 及び その他のクラウドソリューションと連携する計画ソリューション(SaaS)としては、SAP Analytics Cloud for Planning。
SAPの会計予算管理ソリューション概要
SAP Analytics Cloud 全体像とSAP Analytics Cloud for Planning
SAP Analytics Cloud ソリューションは、BI、拡張/予測分析、および計画機能を 1 つのクラウド環境に統合しています。SAP Analytics Cloud for Planningは、SAP Analytics Cloud ソリューションが提供する計画機能をさしますが、BI機能や予測分析機能も、的確な意思決定を促進するための計画実現に活用されます。BI、予測、計画が統合されたSAP Analytics Cloud for Planningは、下記の特徴を持ちます。
- 予測ツールと機械学習ツールを使用して、現在および将来のビジネスを理解する予測計画
- トランザクション、分析、計画を SAP S/4HANA と組み合わせる統合財務計画
- リアルタイムのインサイトを行動に変え、戦略的な整合性を確保するコラボレーション
- データに基づく予算策定、予測、分析をするアナリティクス
SAP Analytics Cloud
SAP Analytics Cloud for planningの多様な計画データ立案方法
BI、拡張/予測分析、および計画機能を 1 つのクラウド環境に統合しているSAP Analytics Cloudにおける計画ソリューションがSAP Analytics Cloud for Planningです。計画業務や業務分析に必要な機能が一か所に揃っているため、分析機能や予測機能を利用した計画データの立案も実現可能です。
SAP Analytics Cloud for Planningではブラウザを通じて計画データの入力を行います。
従来の計画ツールにあった「実績データからコピー」や「計算式・計算ルールから値を算出」に加えて、「履歴データをもとに予測した値」を使用することができます。
計画データ立案方法
ここからは、代表的な計画データ作成例(例1から例4)やその他の計画機能例(例5から例7)をご紹介します。
最初に、SAP Analytics Cloud for Planningでのデータ入力画面のイメージです。この例は、原価センタ別に勘定コード×会計年度/期間ごとの入力画面です。
入力画面
例1 マニュアルデータ入力(上位・下位層への積み上げ・計算項目への反映)
表形式のレポートビュー内のセルに、「直接数値を入力」できるのはもちろん、「パーセンテージ入力」や、「プラスマイナス数値入力」で前回値の増減を簡単に計算入力させることもできます。データは各階層のどのレベルでも入力/変更でき、上位層への積上げの自動反映だけではなく、下位層に自動的に反映させることも可能です。
例1 マニュアルデータ入力(上位・下位層への積み上げ・計算項目への反映)
例2 マニュアルデータ入力(パーセンテージ入力・プラスマイナス数値入力)
表形式のレポートビュー内のセルに、「直接数値を入力」できるのはもちろん、「パーセンテージ入力」や、「プラスマイナス数値入力」で前回値の増減を簡単に計算入力させることもできます。データは各階層のどのレベルでも入力/変更でき、上位層への積上げの自動反映だけではなく、下位層に自動的に反映させることも可能です。
例2 マニュアルデータ入力(パーセンテージ入力・プラスマイナス数値入力)
例3 マニュアルデータ入力(自動按分)
表形式のレポートビュー内のセルに、数値を入力する際は最下層に入力するだけでなく各階層のどのレベルでも入力/変更できます。
上位層への積上げの自動反映だけではなく、下位層に自動的に反映させることも可能です。
例3 マニュアルデータ入力(自動按分)
例4 時系列予測を活用した計画
搭載されている機械学習エンジンにより、ヒストリカルデータから季節変動やサイクル性、上昇・下降傾向などを解析し、将来値の予測とグラフ上への反映や計画値としての書き込みを行うことができます。計画、予算の数値を、担当者の勘や経験を頼りに決めるのではなく、統計解析による時系列予測により、精度の高い見通しを、効率的に実施することが可能です。
例4 時系列予測を活用した計画
例5 バージョン管理
Planningの機能では、公開バージョン・非公開バージョンに分けて管理することができます。非公開バージョンは計画策定時/計画見直し時に、個人ごと/チームごとに自由にデータを編集してシミュレーションを行い、システムに保持することが可能です。
確定した段階で公開バージョンとして、他ユーザに公開することができます。年初の確定予算を利用し、チームごとに修正を行ったり、期中の見直し予算を行うなど、複数の非公開バージョンを作成することが可能です。
例5 バージョン管理
例6 配賦計算 (コストアロケーションなど)
入力/作成した計画データは必要に応じて、配賦処理を行うことが必要になることがあります。
SAP Analytics Cloud for Planningでは大きく2つの配賦計算機能を保持しています。
① 「値を配分」機能を実行:
ストーリー上で「ソース」「ターゲット」「ドライバ」を選択・入力し、値の付替を行います。
② 「割当プロセス」を実行:
事前に付替を行うための「割当」設定を行った上で、ストーリーにて実行します。他のデータアクション処理と組み合わせて
処理を行うことも可能です。
またこの他にデータアクション処理の中では、「高度な式」ステップでスクリプトを記述の上、実行することで独自の処理要件に合わせて
配賦処理を行うことも可能です。
配賦計算 (ストーリー上で「値を配分」)設定画面
配賦を行うためのもう一つの方法として、割当プロセスを定義の上、実行する方法があります。
割当プロセスはデータアクションの一部として実行することが可能で、ストーリー上で実行することが可能です。
配賦計算 (割当プロセスの実行)設定画面
例7 バリュードライバーツリーを使用したKPIシミュレーション
経営指標や主要な評価項目など、ビジネスドライバーを変動させての予測シミュレーションが可能です。予実差の分析から、差異の要因へ掘り下げ、さらにパラメータ変更による影響を視覚的に確認することができます。
例7 バリュードライバーツリーを使用したKPIシミュレーション
SAP S/4 HANA・SAP IBPとSAP Analytics Cloud for Planningの連携
SAP Analytics Cloud for Planningは、トランザクション、分析、計画を SAP S/4HANA と組み合わせる統合財務計画を実現します。財務計画にはSAP S/4HANAとのデータ連携が可能で、また、SAP Integrated Business Planningとのデータ連携により需要計画値を連携することもできます。 データ連携のインターフェースとして、定義済みのOdataサービスが提供されています。
SAP計画ソリューション領域のマッピング
例 SAP Integrated Business Planningとのデータ連携用Odataサービス
SAP Integrated Business Planningとのデータ連携用Odataサービス
例 SAP S/4HANAとのデータ連携用Odataサービス
例 SAP S/4HANAとのデータ連携用Odataサービス
SAP Analytics CloudビジネスコンテンツとSAP Analytics Cloud for Planning
SAP Analytics CloudのビジネスコンテンツはSAP Analytics Cloudを導入する際、初期に各オブジェクトを作成する際のヒントとして、効率的に利用をスタートできるようにSAPから提供されている業種/業務別の定義済コンテンツです。SAP Analytics Cloud for Planningを活用したビジネスコンテンツも提供されています。
コンテンツパッケージユーザガイド にビジネスコンテンツの一覧と詳細が記載されています。計画テンプレートを含むコンテンツはいくつかありますが、統合財務計画のテンプレートとしては、
Integrated Financial Planning for SAP S/4HANA が提供されています。財務計画を立案するための計画入力画面 / 各種計算機能 を含むテンプレートです。
Integrated Financial Planning for SAP S/4HANAは、以下のコンテンツから構成されています。それぞれのコンテンツが計画値を準備し、事業計画のプロセスの構成要素となっています。
- 原価センタ計画
- 製品原価計画
- 販売及び収益性計画
- 財務諸表計画(P/L計画・B/S計画等含む)
- 内部指図計画
- プロジェクト計画
- 設備投資計画
- シミュレーションコックピット
シミュレーションコックピット
原価センタ計画コンテンツにて、前年度の実績データを活動消費量数量および活動原価率の計画提案として使用したり、製品原価計画コンテンツにて、原価見積データを連携し、製品原価計画を作成したり、SAP S/4HANAのデータとの統合計画のテンプレートとなっています。
Integrated Financial Planningコンテンツ全体像
マニュアル入力や、データアクションなどSAP Analytics Cloud for Planningが活用されています。
計画データ入力画面イメージ
計画データ入力画面イメージ
まとめ
SAP Analytics Cloud for Planning ソリューションは、BI、拡張/予測分析、および計画機能が 1 つのクラウド環境に統合された価値が発揮された計画ソリューションです。SAP Analytics Cloud のビジネスコンテンツではSAP S/4HANAシステムとの統合計画のテンプレートが提供されており、SAP Analytics Cloud for Planningを活用した事業計画プロセスの参考にしていただくことができます。SAP Analytics Cloudを導入される際に活用していただけると幸いです。