はじめに
SAP公式RPAツールであるiRPAのメリットとして、ビジネスシナリオに沿った事前定義BotがSAPから提供されている、という点があります。
Reducing Dev Time with the Intelligent RPA Store
SAP S/4HANA Cloud を導入する際は、便利ツールが少ない分RPAの助けが必須と感じているので、ぜひ活用したいところです。
というわけで、4月ごろに仕訳登録のBotを軽く試してみたのですが
仕訳登録用のファイルを Outlook のメールで受信する
受信したファイルを S/4HANA にアップロード
という手順のためか、Outlookが入っていない社用PCではエラーになって先に進めない、という結果になってしまいました。
開発環境である Desktop Studio を使って2から動くように改修すれば良いのでは?と思ったので、夏の自由研究として検証してみることにしました。
この記事は、
chillSAP 夏の自由研究2020 に参加しています。
結論
最初の検証では見落としていたのか、事前定義Botが改善されたのか、ローカルPC上のファイルからのアップロードにも最初から対応されているので、改修は不要でした。
ルートフォルダ内の ToBeProcessフォルダにExcelファイルを入れておけばOKです。
以下、今回の設定手順を共有します。
手順
iRPAを使うための事前設定
インストールガイド 参照。事前定義Botを動かすだけであればStudioのインストールは不要です。
チュートリアル並みに細かい手順が日本語で用意されています。トラブルシューティングのドキュメントも用意されているし、どんどん更新されるので、
Help Portal をブックマークしておくことをおすすめします。
Storeからの事前定義Botのダウンロード
Factoryにログインし、Storeタブを選択します。
仕訳アップロードのBotは2種類ありますが、今回はAPI経由のBotを使います。
「取得」ボタンをクリックします。(この画面ではすでに取得しているのでボタンの形ではない)
パッケージの取得後、パッケージタブから、開発パッケージ、テストスクリプト、アップロードファイルのテンプレートなどの関連ファイルがダウンロードできます。
このシナリオはなぜかStudioで開いて実行するとエラーになってしまうため、
Factory上でデプロイ してテストしました。
API用の通信設定
S/4HANA Cloud 側で、通信契約を設定します。
設定手順書にはこちらの
リンク が記載されていますが、いくつか読みかえが必要でした。
変数の設定
テストスクリプトに従い、Factory側で環境変数を定義します。
必ず設定が必要なもの
その他、ルートフォルダのURLなどは、有人で起動する場合は不要です。
実行
VIDEO
エラー対応
"SUCCESS: Upload completed successfully." と表示されますが、残念ながら仕訳ができたとは限りません。
Resultフォルダのstatusファイルを確認してみてください。
ErrorフォルダにUploadファイルがある場合 :APIをたたくところまで行けていないです。S4HCの通信契約の設定や、Factory側の環境変数でユーザID/パスワードを確認してください。今回試せていませんが、Factoryで設定されているパスワードを確認する方法の
ブログ もありました。
CompletedフォルダにUploadファイルがある場合 :statusをみると、TotalいくつのうちいくつSuccessでいくつFailしたかが分かります。仕訳登録でエラーになった場合は、エラー原因が記載されています。(例:勘定コード XXXXXXXX が勘定コード表 YCOA に登録されていません)
APIを使わないBotとの違い
Automated Upload of General Ledger Entries (48I) の場合も To Be Processフォルダにファイルを入れておけばOutlookなしで実行できます。
違いは下記のとおりです。
実行前にInternet ExplorerでS4HCにログインしておく必要がある
通信契約や環境変数の設定は不要
「一般仕訳アップロード」のFioriアプリを使用するため、GL伝票のみ(AP/AR伝票不可)
テンプレートは「一般仕訳アップロード」アプリからダウンロード
感想
事前定義でこれだけしっかりしたBotが用意されているのはやはり強みだと感じました。
今後、開発環境だけでなく実行環境もCloudに移行予定、など、まだまだ進化が止まらないかんじなので楽しみにキャッチアップしたいと思います。
SAP Intelligent RPA Next Level Sneak Peek – Creating Automation with the new Cloud Studio
トライアルアカウントについて
Cloud Foundryトライアルアカウントの期限でもありますが、3か月たつと消えてしまうので、一から設定する必要があります。
ローカル側はAgentのテナントを変更して再起動し、ログインしなおせばOKです。
600トランザクションまで、という制限もあります。今回の検証では3日で6%まで使いました。