こんにちは!
前回、SAP S/4HANA On-Premise での最もシンプルな Fiori launchpad の構成についてブログ「
SAP S/4HANA Fiori launchpad コンテンツ – 基本シナリオを試してみた」を書きましたので、今回は、SAP S/4HANA Cloud(SAP S/4HANA Cloud, public edition)で同じことをやってみたいと思います。
SAP S/4HANA Cloud でシンプルな独自の初期画面を構成する手順において、On-Premise に比べて何が違うのでしょう?より簡単にできるのでしょうか?このあたりを探っていきたいと思います。
まず初めに、全体的な流れを示します。
前回の SAP S/4HANA On-Premise 向けのブログでは以下のようでした。
単に Fiori launchpad を実行するだけのロールを定義し、テスト用のユーザに割り当てます。この段階では、このユーザは何のアプリも実行する権限を持っていません。
次に、SAP標準のビジネスカタログを基に、カスタムビジネスカタログ、領域、ページ、ビジネスロールを作成します。テスト用のユーザに割り当て、動作を確認します。
今回、検証で利用する SAP S/4HANA Cloud 社内環境では、私はユーザを新規に作成する権限を持っていないため、テスト用のユーザを新規登録するのではなく、既に私に割り当てられているユーザを使って検証します。
また、SAP S/4HANA Cloud では、現在、
Business Catalogs (F2471) アプリを使用して新しいビジネスカタログを登録することは出来ません(参照:ノート「
2633830 - S/4HANA Cloud でビジネスカタログを登録するオプションがない」)。
従って、今回の全体フローは次のようです。
使いたいアプリの権限を与えてくれる SAP 標準のビジネスカタログを確認する。カスタムの領域、ページ、およびビジネスロールを作成し、ビジネスカタログを割り当て、最後にそのカスタムロールを私のユーザに割り当て、動作を確認する。
使いたいアプリは、前回同様
Manage Sales Order – Version 2 (F3893) とします。
最終的に作成する構造は前回のブログの命名規則を踏襲した以下の通りです。
また、検証環境は、SAP S/4HANA CLOUD 2308 です。
まずは、初期段階での Launchpad 画面を示しておきます。私のユーザには、管理者用のビジネスロールテンプレート SAP_BR_ADMINISTRATOR からコピー登録したビジネスロールのみが割り当てられています。これにより、領域「Administration」が表示されており、ここからアクセスできる各種アプリを使って、設定作業を進めていきます。
ビジネスカタログの確認
SAP Fiori Apps Reference Libraryで、アプリ
Manage Sales Order – Version 2 (F3893) を検索し、 IMPLEMENTAION INFORMATION タブ > Configuration を見ると2つのビジネスカタログが記載されていますが、Business Catalog Description を見て、利用すべき適当なカタログは SAP_SD_BC_SO_PROC_MC であることを確認します。
領域とページの作成
Manage Launchpad Spaces アプリを使って、領域 (Space) とページを作成します。
Create ボタンで領域を作成します。オプション Also Create a Page をONにして、ページも同時に作成します。領域とページのそれぞれの ID は、Z始まりとし、Description、Title に関しては、アプリ
Manage Sales Order – Version 2 (F3893) を含む標準の領域やページのテキストに少しだけ文字を加えた以下としています。
- Space ID: Z_SD_SP_MSOV2
- Space Description/Title: Internal Sales SIMPLE
- Page ID: Z_SD_PG_MSOV2
- Page Description/Title: Sales Processing SIMPLE
タブ Pages の中のページ Z_SD_PG_MSOV2 をクリックし、Manage Launchpad Pages アプリに遷移した後、Edit ボタンをクリックします。
Section Title を、Sales Orders - SIMPLE として、画面右上のメニューボタン「…」をクリックし、Catalog を選択、Select Catalog ウィンドウで、ビジネスカタログ SAP_SD_BC_SO_PROC_MC を検索し、Select ボタンをクリックします。
選択したカタログに含まれるアプリの中からページに含ませたいものを選択し、Add as Tile ボタンで Page Content に追加し、Saveボタンで保存します。
ロール Z_BR_MSOV2 の作成と領域 Z_SD_SP_MSOV2 の割当
Maintain Business Roles アプリで、ビジネスロール Z_BR_MSOV2 を作成します。
New ボタンをクリックし、以下を入力します。
- Busines Role ID: Z_BR_MSOV2
- Busines Role Description: Custom business role for blog
タブ Assinged Launchpad Spaces を選択し、Add ボタンで作成した領域 Z_SD_SP_MSOV2 を割り当てます。
ロール Z_BR_MSOV2 に領域 Z_SD_SP_MSOV2 が割り当てられました。
ロール Z_BR_MSOV2 へのビジネスカタログ SAP_SD_BC_SO_PROC_MC の割り当て
引き続き、Maintain Business Roles アプリで、ロール Z_BR_MSOV2 に、ビジネスカタログ SAP_SD_BC_SO_PROC_MC を割り当てます。
ビジネスカタログ SAP_SD_BC_SO_PROC_MC (Sales - Sales Order Processing) に関連して必要となる可能性のある ビジネスカタログ が提案されてきます。例えば、得意先マスタの参照のための Master Data - Customer Display (SAP_CMD_BC_CUSTOMER_DSP_PC) など。ここでは、不要として、何も選択せず、OK ボタンをクリックします。
ロール Z_BR_MSOV2 にビジネスカタログ SAP_SD_BC_SO_PROC_MC が割り当てられました。
ロール Z_BR_MSOV2 の私のユーザへの割り当て
引き続き、Maintain Business Roles アプリで、ロール Z_BR_MSOV2 に、私のユーザ を割り当てます。
Save ボタンで保存しようとすると、以下の警告がポップアップ表示されます。
- Do you want to save the business role with the default access categories (No Access for Write Access, Unrestricted for Read Access, Unrestricted for Value Help Access)?
ビジネスカタログをビジネスロールに割り当てる際、デフォルトのアクセスカテゴリが適用され、Write(書込)アクセスにはアクセスなしと設定されます。詳細については、ヘルプ「
制限に基づく権限の定義方法」を参照ください。
ここでは、OK ボタンで続行します。
設定を変更する際は、Maintain Business Roles アプリで、Maintain Restrictions ボタンをクリックすることで、詳細設定画面に遷移できます。
動作確認
私のユーザで再ログインすると、作成した領域、タイルが表示され、アプリ Manage Sales Order – Version 2 (F3893) を実行することができます。
また、標準のビジネスカタログ SAP_SD_BC_SO_PROC_MC が割り当てられているため、App Finder では、Manage Sales Orders アプリ以外にも、Transaction VA01 なども選択可能となっています。
ただし、Write(書込)アクセスが無いため、VA01 を実行しようとすると、権限エラーとなります。
最後に
このブログ執筆の動機でもあった、SAP S/4HANA On-premise と SAP S/4HANA Cloud, public edition の違いについて整理します。
Fiori launchpad を構成する要素のコンセプト、名称、関連性は同じです。以下は概略図です。
それぞれで利用するアプリを表にしました。
補足
その他、SAP S/4HANA Cloud 特有のものについて、現在、私の知る範囲内で、以下に示します。
関係性を示すアプリ
IAM Information System (F2450): このアプリでは、ビジネスロール、ビジネスカタログ、ビジネスユーザ、制限、およびそれらの関係についての情報を照会することができます。
SAP S/4HANA Cloud での翻訳
Manage Launchpad Spaces アプリ、Manage Launchpad Pages アプリの中で、あるいは、
Maintain Customizing Translations (F6962) アプリでテキストを翻訳できます。詳細は以下のヘルプを参照ください。
カスタムアプリのビジネスカタログへの追加
Custom Catalog Extensions (F1950) アプリで、カスタムアプリを標準のビジネスカタログに追加し、実行権限を付与できます。