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はじめに

2023年第3四半期より、SAP Datasphereの新機能として「ディレクトリ階層」が追加されました。

本ブログでは「ディレクトリ階層」について、製品Helpを補足することを目的に、SAP S/4HANA Cloud Private Edition(以下S/4HANAと略)のG/L勘定階層データを用いて解説をしていきます。

(2024年3月時点)当機能は、SAP S/4HANA Cloud Public EditionもしくはBW bridgeの階層データがサポート対象となります。

 

機能概要

S/4HANAでは勘定コード等の階層情報を、グローバル階層等の機能を使って複数設定することができます。

SAP Datasphereでは、階層情報を連携し、新機能である”ディレクトリ階層”機能を使ってモデリングすることで、SAP Datasphere及びSAP Analytics Cloud (以下SACと略) にて、S/4HANAで設定した複数の階層情報を利活用することができます。

画像1_1.png


S/4HANAでは、“残高試算表”等の単一の
CDS View-およびレポート内で複数の階層を選択可能ですが、SAP Datasphereの“ディレクトリ階層”機能を使用したモデリングを実施する事で、S/4HANAの様に複数の階層を選択可能となります。

画像2.png

 


<参考情報>S/4HANAでの階層情報の持ち方

S/4HANAでは、Fioriアプリを介したグローバル階層設定の他に、ECC時代からある階層設定を以下のテーブルにデータを格納の上、CDS View等で活用する仕組みとなっています。
SAP Datasphereでこれらのデータを活用する際はCDS Viewを介して連携を行い、ディレクトリ階層を使ったモデリングを行います。

画像3.png

これらのデータを抽出するために必要なCDS Viewは、各オブジェクト毎(勘定コード、原価センタ等)に作成されています。
1: ECCの階層データ(財務諸表バージョン、原価センタグループ等)は、基本グローバル階層に変換してグローバル階層管理のアプリで更新する手法が主流。
2: S/4HANA Cloud Public EditionではBackend systemへのアクセスが許可されていない。そのためS/4HANA(オンプレ)のデータ確認方法であるトランザクションコード"SE16"は使用出来ず、標準アプリでの確認のみとなり従来の様な確認が出来ない。

 

実装のステップ

ディレクトリ階層を使用したモデリングの際、以下のビュー構成で設定を行います。

画像4.png

ディレクトリ階層を実装するステップは以下の通りです。

STEP1:S/4HANAG/L勘定情報およびトランザクションデータの取得

STEP2:SAP Datasphereでの階層マスタ・階層ディレクトリの実装

STEP3:勘定科目マスタ・ファクトビューの実装、分析モデルの作成

 

STEP1:S/4HANAG/L勘定情報およびトランザクションデータの取得

S/4HANAから”ABAP CDS”を使用して、下記表にある”I_GLACCOUNT”から始まるG/L勘定情報およびトランザクションデータを取得します。

取得データ一覧

#

データの種別

概要

抽出に使用したCDS

1

階層IDマスタ

テキスト

財務諸表バージョン、およびユーザー定義で作成したグローバル勘定科目階層のテキストを保持

I_GLACCOUNTHIERARCHYTEXT

2

階層IDマスタ

財務諸表バージョン、およびユーザー定義で作成したグローバル勘定科目階層を保持

I_GLACCOUNTHIERARCHY

3

階層ノードテキスト

階層の親子関係情報などといった階層の定義情報のテキスト

I_GLACCOUNTHIERARCHYNODET

4

階層ノードマスタ

階層の親子関係情報などといった階層の定義情報を保持

I_GLACCOUNTHIERARCHYNODE

5

勘定科目マスタ

テキスト

トランザクションデータに紐づく勘定科目マスタのテキストを保持

I_GLACCOUNTTEXTRAWDATA

6

勘定科目マスタ

トランザクションデータに紐づく勘定科目マスタ

I_GLACCOUNTINCHARTOFACCOUNTS

7

G/L 勘定明細ローデータ

会計明細(トランザクションデータ):会社コード、伝票番号、明細番号、転記日付、会計年度期間、借方貸方、勘定科目、金額を保持

I_GLACCOUNTLINEITEMRAWDATA

 

S/4HANAのCDS ViewSAP Datasphereに取り込む際は、リモートテーブル機能を用いてデータ連携を実施します。
具体的には、ホーム画面からデータビルダインポートリモートテーブルをインポート(SAP S/4HANA Cloud接続”を選択→“ABAP CDS”→抽出対象のCDS Viewを選択して抽出となります。

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STEP2:SAP Datasphereでの階層マスタ・階層ディレクトリの実装

  1. I_GLACCOUNTHIERARCHYTEXT”をソースとしたセマンティックタイプテキストのマスタビューを作成します。その後、”I_GLACCOUNTHIERARCHY”をソースをとしたセマンティックタイプディメンションのマスタビューを登録し、先に作成したテキストビューとアソシエーションします。

    画像6.png 
  2. “I_GLACCOUNTHIERARCHYNODE”をソースにし、セマンティック用途は”ディレクトリの階層”、”HierarchyName"という項目をキー列に設定したビューを登録します。

    その後、作成済の“I_GLACCOUNTHIERARCHY”ビューとアソシエーション、項目“HierarchyName”を“I_GLACCOUNTHIERARCHY”の項目“GLAccountHierarchy”とマッピングします。
     
    画像7.png

     

  3. I_GLACCOUNTHIERARCHYTEXTをソースとした、セマンティックタイプテキストのマスタビューを作成します。その際に項目“HierarchyNode”を複合キーとして設定を行います。
    ”テキスト”のマスタビューの作成後、前述で作成した”I_GLACCOUNTHIERARCHYNODE”ビューとアソシエーションを行います。

    画像8.png

     Helpの記述と異なり、階層ノードに対するテキスト情報を表示するためのアソシエーション設定は、ディメンションビューを介さずにテキストビューを直接アソシエーションすることで階層ノードのテキストを表示することができます。(2024年3月時点) 

    画像9.png

  4. “ディレクトリの階層の設定”をクリックすると、階層定義設定のダイアログが出現します。
    画像10.png
  5. “ディレクトリ階層の設定”は以下の様に実施致します。自分のノードや階層上位となるノードの項目指定やノードタイプ値に合わせて表示する項目の設定を行うことが可能です。
    画像11.png
  6. “ノードタイプ値の設定内容例は以下の通りです。
    画像12.png

     

STEP3:勘定科目マスタ・ファクトビューの実装、分析モデルの作成

  1. “I_GLACCOUNTTEXTRAWDATA”をソースにし、項目Long TEXT”をテキストセマンティックとして定義するビューを作成します。
    次に“I_GLACCOUNTINCHARTOFACCOUNTS” をソースにしたディメンションのマスタを登録し、上記のテキストビューをアソシエーションします。
    ディメンションビューである“I_GLACCOUNTINCHARTOFACCOUNTS”ビューと、STEP2で作成した階層とディレクトリ情報を保持した“I_GLACCOUNTHIERARCHYNODE”ビューをアソシエーションします。

     

    画像13.png
  2. I_GLACCOUNTLINEITEMRAWDATA”をソース、数値項目”AmountInGlobalCurrency”をメジャーとするファクトビューを作成します。
    その後、前述の階層とディレクトリを持ったディメンションビューをアソシエーションします。ビューが完成しましたら、ファクトビューを使用した分析モデルを作成します。

    画像14.png
  3. 完成した分析モデルのデータプレビューから、行に“GLAccount”を追加します。
    GLAccount”を右クリック階層階層選択を選択すると、階層選択ダイアログが表示され、CDS ビューが保持している出力可能な階層の一覧を確認することができます。
    今回は“貸借対照表および損益計算書(日本)”を選択します。

    画像15.png
  4. 選択した階層表示、今回は貸借対照表および損益計算書(日本)に、表示が切り替わることが確認できます。

    画像16.png

最後に

本ブログでは、S/4HANAが保持するGL勘定階層、階層テキストを用いて、「ディレクトリ階層」について解説を致しました。

より詳細な情報を知りたい方は、弊社Product ExpertPostした下記Blogシリーズも御参照下さい。

An Introduction to Hierarchy with Directory in SAP Datasphere