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はじめに


前回は、SAPシステムの導入フェーズから運用フェーズに至るまでの一連の流れの中で、SAP Cloud ALMが提供していく各種機能をご紹介しました。また、SAP Cloud ALMは、主にSAPシステムの中でもCloudをメインでご利用いただくお客様向けにご提供を開始しておりますが、SAP S/4HANAオンプレミス版やSAP Business Suiteに関しても運用の一部となる監視機能をご利用いただくことが可能になりました。本稿では、Cloud ALMの運用に関する機能のご紹介をし、これまでSAPオンプレミス環境を運用されてきたお客様にもご参考いただけますよう、SAPオンプレミス環境に対する接続設定の流れをご紹介します。

SAP Cloud ALM 運用機能概要


SAP Cloud ALMの監視運用機能については、こちらのブログ記事にて概要レベルでご紹介しておりますが、より細かい機能群がこちらで表されています。その中で、現時点でご利用可能な機能についてご紹介していきます。



Business Process Monitoring(業務プロセス監視)



システムの監視ツールというと、インフラ、リソース、プロセスの死活、例外など、ベーシス観点からの項目を監視するのが一般的で、それらのアラートを検知し、影響を及ぼしている業務と結び付けて問題解決を行ってこられたかと思います。しかしながら、上記の監視項目が正常な値を示していたとしても、システム内に実装されている業務プロセスが滞りなく行われているかというのは別の話で、業務観点での監視項目を設け、監視することで、安定した業務プロセスを確保いただくことを推奨しております。

こちらは、SAPシステム上で実装されているお客様業務プロセスフローにおける処理の滞留や遅延、エラーなどを監視し、お客様の業務における問題をいち早く検知し、安定した業務プロセスを担保するための支援ツールとなっています。また、SAP Cloud ALMには、監視項目(KPI)が事前定義されており、お客様の好みに応じてそれらを有効化するだけで、監視対象の業務プロセスを簡単に監視することが可能となっています。さらに、問題が発生している処理がどの伝票処理に影響を及ぼしているか追跡調査できるのみならず、自己問題解決の機能も順次拡充を行っており、運用の効率化を図ることも可能となってきています。

Integration & Exception Monitoring(統合&例外監視)



従来のオンプレミスシステムにクラウドが取り込まれることにより、プラットフォームはより複雑化していきます。安定した業務運用を確保するためには、それらシステムが安定して稼働していることに加え、システム間での情報連携が正確かつ期待通りに処理されている必要があります。この機能は、対象となるシステムの例外検知に加え、システム間のデータフローを監視し、ハイブリッド環境全体の安定化を担保するためのツールとなっています。

お客様の要件によって、ご利用いただくSAPクラウド製品は様々かと思います。現在も、サポート対象とするSAPクラウド製品の拡充を図ってはおりますが、最新の情報はこちらからご確認いただけます。

Job & Automation Monitoring (ジョブ&自動化監視)



複数のSAPクラウドサービスで処理されているジョブを各々監視するのは非効率で、問題検知から原因調査、再実行までの時間が長期化する恐れがあります。こちらの機能は複数のSAPクラウドサービスで処理されているジョブを集中監視し、問題検知から原因調査までの時間を短縮化し、業務への影響を最小限に抑えるツールとなっております。また、こちらは、再実行などジョブ運用フローを支援するための機能や、過去のジョブ実行履歴の傾向分析を行うための機能の拡充を計画しております。こちらの機能に関する、サポート対象のソリューションはこちらからご確認ください。

Real User & Performance Monitoring (リアルユーザ&パフォーマンス監視)



エンドユーザが安定した業務プロセスを遂行するために、例外対応はもちろんですが、トランザクションのパフォーマンスの安定化も担保することが求められます。こちらは、エンドユーザが実際に体験したトランザクションのパフォーマンスを監視し、関連するクラウドサービスごとの処理時間を可視化し、原因調査を支援するためのツールとなっています。この機能をご利用いただくことで、エンドユーザが抱えるパフォーマンスの問題が、フロントエンド側にあるのか、クラウドサービスにあるのか、または、ネットワークを含むオンプレミスシステム側にあるのかなど切り分けに役立てることができるのみならず、複雑なハイブリッド環境を横断して、業務システムコンポーネントの使用状況も可視化が可能となります。こちらの機能に関する、ソリューションおよびフロンドエンド機能のサポート対象については、こちらをご確認ください。

SAPオンプレミス環境との接続方法


SAP Cloud ALMを用いて運用の機能をご利用いただくためには、SAP Cloud ALMと対象のSAPオンプレミス環境を接続し、監視・管理データを連携する必要があります。サポートされている製品とご利用可能な機能の一覧は以下の通りです (蛇足になりますが、SAP S/4HANA Private Cloud Editionについても記載)。



























業務プロセス監視 統合&例外監視 リアルユーザ監視
S/4HANAオンプレミス版
SAP Business Suite
SAP S/4HANA Private Cloud Edition (PCE)

1. 事前準備


接続設定の前提は、以下の通りです。

  • SAP_BASIS 7.40 SP20以上

  • ST-PI 7.40 SP14以上

  • SAPノート2985521の最新版が対象システムに適用済み

  • 対象システムプロファイルパラメータicm/HTTPS/client_sni_enabled = TRUEになっている


(※SAPノート510007も併せてご参照ください)

メニューより、システム→ステータス→詳細(“製品バージョン”情報下のボタン)から、ソフトウェアコンポーネントのバージョン及び、SPレベルが前提を満たしていることを確認します。


次に、トランザクション“SNOTE”を用いてSAPノート2985521を適用します(通常は、SNOTEの機能に従うのみで適用が完了するため、適用の過程は割愛)。

適用前(該当のノートをダウンロードし、“SAPノート適用”ボタンを押下)


適用後(ステータスが”completed implemented”になっているのを確認して適用完了)


次に、接続設定を行うユーザおよび、監視データの収集を行うユーザに必要な権限を割り当てます。

接続設定を行うユーザに対しては、ロール“SAP_SDF_ALM_SETUP”を割り当てます。これにより、接続設定を行うトランザクション/SDF/ALM_SETUPが実行可能になります。トランザクション“PFCG”より、該当ロールを参照し、ユーザタブより割り当てを行います。


続いて、監視データの収集を行うユーザに対するロールの割り当てです。ジョブ実行を行うユーザ“CLOUD_ALM”を予め作成しておき、同様にPFCGからロール” SAP_SDF_ALM_COLLECTORS_JOBS “を割り当てます(ユーザ名は任意)。


続いて、対象システムとSAP Cloud ALMを接続するために、SAP Cloud ALM Service Keyをヘルプポータルに従って取得します(ヘルプポータルが日本語対応、かつスクリーンショットによる解説付きのため割愛)。

監視対象のオンプレミスのシステムにログインし、トランザクション“/n/SDF/ALM_SETUP”を実行します。


 

2. Cloud ALMの宛先の定義


新たにCloud ALMの宛先を作成するため、”Target ALM Destination”に名前(任意)を入力しエンターキーを押下します(画面の例は“CALM01”)。Target ALM Destinationの宛先は複数作成することができ、宛先ごとに設定を定義/変更することが可能です。



3. HTTP宛先の設定


予め取得しておいたSAP Cloud ALM Service Keyを用いて、SAP Cloud ALM APIの登録を行います。動画面、“2.Maintain HTTP destination”より、“Update destination”を押下します。


以下のようなポップアップ画面が出てきますので、“Paste Service keys”を押下します。


JSONファイルで、取得しておいたSAP Cloud ALMのService Keyをペーストし、“続行”ボタンを押下します。


Service Keysが読み込まれ、必要か所に情報が埋め込まれているのが確認出来たら、“続行”ボタンを押下します。


HTTP宛先が修正されたというポップアップが表示され、Target ALM Root URLが定義されているのが確認されます。




4. 登録宛先の情報入力


画面“3.Enter registration target”より、監視・管理データ収集ジョブの実行ユーザを”Background User”に登録します(画面の例は“CLOUD_ALM”)。

その後、“Register”ボタンを押下し、接続先となるSAP Cloud ALMを登録します。SAP Cloud ALMの登録を解除したい場合は、”Unregister”ボタンを押下してください。登録解除することで、データ収集ジョブや死活監視の機能が停止されます。


CALM01に対してジョブがスケジュールされたことがポップアップ表示されます。各々のステップが正常に実行されると緑のチェックアイコンが表示されます。



SAP S/4HANA やSAP Business Suiteが無事登録されると、SAP Cloud ALMのランドスケープ管理から、登録されたシステムを確認することが可能です。

SAP Cloud ALMのラウンチパッドを開き、“ランドスケープ管理”のタイルをクリックします。


画面左側より、“オンプレミスサービス”を選択すると、登録したオンプレミスのシステムが表示されます。



5. 利用用途ごとのデータ収集の選択


SAP Cloud ALMの監視機能のうち特定の機能については、データの収集を明示的に選択する必要があります。SAP ALMの設定画面、“4.Choose usecases(s) to be collected”より、”Activate usecases”ボタンを押下します。


以下のようなポップアップ画面が表示されますので、その中で必要な機能(画面上では“Usecase”)を選択し、”続行“ボタンを押下します。


設定が反映されると、“Configured Tasks”に有効化した機能の数が表示されます。


以上で、オンプレミス環境の接続設定は完了です。

 

まとめ


本稿では、運用フェーズにご利用いただける機能概要とSAP Cloud ALMの対象サポート領域の拡張例とオンプレミス環境についてご紹介しました。これまでSAPが提供してきたSAP Solution ManagerによるALMの機能と比較するとSAP Cloud ALMの機能は、業務プロセス、システム間統合、例外、ジョブ、そしてエンドユーザ目線のパフォーマンスなどと、よりクラウド環境を意識した機能が提供されています。SAP Cloud ALMの運用機能は、その拡張および対象システム範囲を今後も広げていく予定です。こちらのリンクよSAP Cloud ALMの製品ロードマップをご確認いただけます。

オンプレミス環境の接続設定後、SAP Cloud ALMで有効化したい監視機能のタイルに移動し、監視を有効化を行ってみてください。各監視機能の有効化の方法は以下のリンクよりご確認いただけます。