はじめに
こちらのブログでは、SAP BW∕4HANA から SAP Datasphere へのモデル転送の手順を紹介します。
SAP BW/4HANAモデル転送の概要についてはこちらのブログもご覧ください。
前提
モデルを転送する前に、まずSAP BW∕4HANAシステムでSAP Datasphereへ転送するクエリをリリースしておく必要があります。また、SAP DatasphereからSAP BW∕4HANAシステムに接続するために、SAP BW/4HANAモデル転送タイプの接続を作成しておく必要があります。
それぞれ手順を確認していきます。
SAP Datasphereへ転送するクエリのリリース
SAP BW/4HANAで分析クエリを作成していて、それらのクエリに基づいたビジネスエンティティをSAP Datasphereでも利用したい場合、モデルのインポートが有効です。これにより、手動で再構築することなくSAP BW/4HANAの既存モデルとメタデータをSAP Datasphereのモデリングで使用できるようになります。そのためにはまず、転送対象の分析クエリのリリースを行います。
手順
- SAP BW/4HANAで、トランザクションコード「RSDWC_QUERY」を実行します。

- 新しくクエリをリリースするために、[DWC 使用のバリアント登録]を選択します。

- クエリ選択ダイアログが表示されるのでヘルプボタンを押して対象のクエリを選択します。

※対象のクエリが見つからない場合は、「*」 を入力して検索するとあいまい検索が可能です。

- クエリを選択したらEnterキーを押下し、メッセージテキストを確認後「リリース」を押します。

これでSAP Datasphereで利用するクエリがリリースできました。
SAP BW/4HANAの変数はSAP Datasphereに直接相当する機能がないため、固定値に置き換える必要があります。「変数値を設定」を使用して変数に値を入力することができます。クエリがリリースされると、それらの値は保存されます。
さまざまな変数の割り当てが必要な場合は、複数のバリアントを作成して代用します。バリアントに一意の名前を割り当て保存すると、SAP Datasphere用にフォーマットされます。クエリがリリースされた後もバリアントは更新できます。更新した場合は忘れずにリリースしましょう。
SAP BW/4HANAモデル転送接続の作成
複合プロバイダや、インフォオブジェクトとともにSAP BW∕4HANAから分析クエリをインポートするには、SAP BW/4HANAモデル転送のための接続を用意する必要があります。
手順
- SAP BW∕4HANAで、トランザクションコード「SPRO」 を実行しSAP Gateway > OData チャネル > 管理 > 一般設定 > 有効化および更新: サービス(またはActivate and Maintain Services)から有効化します。

- OData サービス「ESH_SEARCH_SRV」を選択し有効化します。

- SAP Datasphere のサイドナビゲーション領域で、システム > 管理 > データソース設定 > ライブデータソースをクリックし、ライブデータが自社のネットワークを安全に離れることを許可をオンにします。

- SAP Datasphere のサイドナビゲーション領域で、システム > 設定 > データ統合 > ライブデータ接続 (トンネル) を開き、SAP BW∕4HANA に対してトンネルタイプのライブデータ接続を作成します。
ライブデータ接続 (トンネル) セクションで、ライブデータ接続を管理をクリックします。

- 接続タブで、「接続を追加」をクリックします

- データソースを選択ダイアログが表示されます。ライブデータに接続を展開して、SAP BW を選択します。

新規 BW ライブ接続ダイアログが表示されるので、接続の名前と説明を入力し接続タイプとしてトンネルを選択します。トンネルを有効化すると、接続されたソースからのデータが常にクラウドコネクタを通じて転送されます。
続いて、ロケーションID、SAP BW∕4HANA ホスト名、HTTPS ポート、およびクライアントを入力します。クラウドコネクタで設定された仮想ホスト名と仮想ポートを使用してください。認証方法で、ユーザ名およびパスワードを選択します。接続に使用するユーザ名 (大文字/小文字の区別あり) およびパスワードを入力します。
すべて入力が終わったら「OK」を押します。接続が保存されて、SAP BW∕4HANA モデル転送接続の SAP Datasphere 接続作成ウィザードで選択できるようになります。

- データプロビジョニングエージェントをインストールして設定し、SAP HANAアダプタをSAP Datasphere に登録します。
詳細については、データプロビジョニングエージェントのインストールを参照してください。
- SAP Datasphereで、データプロビジョニングエージェントが動作しているサーバの外部 IPv4 アドレスを IP 許可リストに追加します。または、ネットワークファイアウォールを使用している場合は、公開プロキシ IP アドレスを IP 許可リストに追加します。
サイドナビゲーション領域で、システム > 設定 > IP 許可リスト > 信頼されたIPをクリックします。

追加をクリックして、IP アドレスの許可ダイアログを開きます。

- ダイアログの CIDR フィールドで、単一の IPv4 アドレス、または CIDR 接尾辞で指定されるアドレス範囲を指定します。任意で最大120文字の説明を追加することができます。追加をクリックしてアドレス一覧に戻ります。

- 「保存」ボタンをクリックし新たなIP アドレスをデータベースの許可リストに保存します。変更が適用されたか確認するにはリフレッシュを押します。IPアドレスが変更された場合は、許可リストからエントリを選択して編集することもできます。また、IP アドレスが不要になった場合は、SAP Datasphere のデータベースへのアクセスを禁止するために、対象の IP アドレスを完全に削除することができます。データベースの許可リストを更新するには、変更を加えてから保存をクリックします。データベースの更新には、若干の時間がかかる可能性があることに留意してください。
- DP Agentの接続
データプロビジョニングエージェントをSAP DatasphereのSAP HANAデータベースに接続します。詳細はこちらを確認ください。
これで、SAP BW/4HANAモデル転送のための接続が作成できました。
SAP BW/4HANAモデル転送の手順
いよいよSAP BW/4HANAのモデルをSAP Datasphereにインポートします。
手順
- サイドナビゲーション領域で、ビジネスビルダをクリックします。必要に応じてスペースを選択します。インポート> SAP BW/4HANA > モデル転送ウィザードを選択します。

- モデル転送ウィザードで、使用する SAP BW∕4HANA 接続を検索して選択します。次へを選択します。

利用可能なすべての分析クエリが表示されます。

- ビジネスビルダオブジェクト作成設定を使用して作成するオブジェクトの制御と、転送する分析クエリを選択します。ビジネスビルダおよびデータビルダで生成されるオブジェクトの一覧が、右側に表示されます。インポートステータスは、既存のオブジェクトが上書きされるかどうか、または対象のオブジェクトが最新のものであるかどうかを示します。
- ビジネスエンティティと利用モデル [デフォルト] - 使用可能なすべてのデータビルダオブジェクトとビジネスビルダオブジェクトを作成します。
- ビジネスエンティティのみ - データビルダオブジェクトとビジネスビルダビジネスエンティティを作成します。
- なし - データビルダオブジェクトのみを作成します。クエリは SAP Datasphere 分析モデルとしてインポートされます。これは SAP Analytics Cloud で直接利用できます。分析モデルは、アソシエーション、グローバルフィルタ、制限メジャー、計算メジャーなど、分析クエリのすべてのプロパティを継承します。

- [任意] クエリのデータに関連付けられている分析権限をインポートするには、権限をインポートボタンをクリックし、OKをクリックします。
データアクセス制御を作成してファクトに適用するために、データビルダ/データアクセス制御タブのインポート対象オブジェクトの一覧に追加オブジェクトが追加されます。
このウィザードで分析権限をインポートしない場合は、後でデータアクセス制御アプリでインポートすることができます (SAP BW および SAP BW∕4HANA の分析権限のインポート を参照)。
インポートを選択し、OKを押します。
- インポートプロセスに関する通知が生成され、インポートが成功した場合は生成されたオブジェクトがビジネスビルダとデータビルダに表示されます。
インポート > SAP BW/4HANA > ログを表示を選択すると、詳細を確認することができます。


これでSAP Datasphereへのインポートは完了です。ビジネスビルダとデータビルダにオブジェクトが生成されました。生成された分析モデルはそのまま利用することもできますし、他のマスタデータを結合したりすることで新たな分析要件に答えることもできます。必要に応じてこのSAP BW/4HANAモデル転送機能をご活用ください。