はじめに
このブログポストでは、2021年にリリースされた、SAP Analytics Cloudのパフォーマンス分析ツールについて紹介します。
パフォーマンス分析ツールが提供される前のストーリー実行時間分析
パフォーマンス分析ツールが提供される前は、トレースを取得して、記録された内容から、実行時間の分布を確認していました。(参照:
SAP Analytics Cloud ストーリーを最適なパフォーマンスでご利用いただくために “ストーリーの実行時間分析”パート)
トレース取得ツールとそのツールを使用する知識が必要でしたが、2021.Q1にてリリースされたパフォーマンス分析ツールにより、トレース情報の記録や実行時間の分布のための情報の分類が自動化されるようになりました。
パフォーマンス分析ツールの利点
パフォーマンス分析ツールによって、分析作業の手間が省力化されます。
- バージョン2020以前のSAP Analytics Cloud のパフォーマンス分析には、Google Chrome 開発者ツールなどのサードパーティツール、専門知識、そして、分析するための時間が必要でしたが、トレース分析のための専門知識や時間がなくても分析結果が確認できます。
- 現行バージョンのSAP Analytics Cloudは、パフォーマンス統計を収集し、内部 SAP HANA ビューに保存しています。分析担当者がGoogle Chrome開発者ツールなどでトレースを取得する必要はありません。
- ネットワークトラフィックを調査したり、リクエストをひとつずつチェックして、ウィジェットおよびバックエンドシステムにマッピングしたりする必要はありません。現行バージョンのSAP Analytics Cloudでは、これらは自動的に行われます。
パフォーマンス分析ツールにより、全体実行時間の確認、さらに、どのコンポーネント (フロントエンド、ネットワーク、バックエンド) でどのくらいの時間が費やされているかを確認することができるようになりました。

パフォーマンス分析ツールの実行
パフォーマンス分析ツールを実行して、どのような情報が表示されるのか、ご紹介します。
サイドナビゲーションの システム 〉 パフォーマンス 〉 分析ツール を実行すると、パフォーマンス分析ツールが起動します。
パフォーマンス分析ツールでは、ストーリーやアプリケーションの処理時間について、ネットワーク、フロントエンド、およびバックエンドの 3 つの主要領域で確認することができます。問題のある領域については、パフォーマンス改善に役立つ該当する KBA、ベストプラクティス文書、およびヘルプ記事にアクセスすることができます。

分析対象のストーリー・アプリケーションの実行ログを指定します。
- 日付、ユーザ、リソース(ストーリー・アプリケーションの名称)を検索条件として、分析対象を検索します。
- 検索結果に常時されている一覧にて、分析対象を指定します。

パフォーマンス分析ツールの分析結果が表示されます。
画面上部には、検索条件の指定画面へ戻るボタンや、表示対象の切り替え機能があります。
その下には、実行時間の概要、表示されるチャートのデータ絞り込み条件を設定するフィルタ、実行時間を様々な切り口で分析するチャートが配置されています。

各チャートに表示されている値について、もうすこし詳細にご紹介します。
画面の上部には、検索条件指定画面へ戻るボタンと実行時間の表示単位を変更するボタンがあります。

次に、分析対象、起動時間、合計ウィジェット時間、最大バックエンド時間、最大ウィジェット時間と合計ウィジェット時間中央値 の情報があります。全体実行時間や、処理時間の全体的な傾向、ボトルネックの可能性がある部分的な情報を確認することができます。

処理時間の情報が切り口を変えて、チャートに表示されているセクションに続きます。
3個のタブで実行時間の分析軸の切り替えができます。ページロード時間タブ、ウィジェットドリルダウンタブ、実行時間の内訳タブ、があります。
ページロード時間タブでは、ページの読み込み時間について、アクション開始時刻別の実行時間が、処理レイヤ(バックエンド・ネットワーク・フロントエンド)ごとにわかれて表示されます。たとえば、ストーリーを開く初期ロードのアクションの全体実行時間を、処理レイヤごとに棒グラフで表示します。
分析対象の操作を特定して、その実行時間の分布を確認したいときに利用することができます。

ウィジェットドリルダウンタブでは、アクション開始時間別、ウィジェット別の実行時間が表示されます。ウィジェットの詳細欄には、接続済みのモデルの情報やバックエンドシステムでの処理情報が表示されます。


実行時間の内訳タブは、アクション開始時間ごとにその処理時間の内訳が表示されます。

画面半分から下には、時系列チャートが4個配置されています。合計実行時間や処理レイヤごとの実行時間の時系列推移が確認できます。ページロードタブなどのタブを選択したときに表示されている棒グラフを選択することにより時系列チャートに表示されるデータを絞り込むことができます。
特定のページ、特定のウィジェットの処理時間を時系列遷移で確認することや、単一ユーザと全ユーザとの差異を確認することができます。

このように、パフォーマンス分析ツールを使うことにより、開発担当者、運用担当者自身でトレースの取得から分析を開始することなく、実行時間の状況を知ることができるようになっています。
また、このツールの情報を、システムパフォーマンスの最適化に役立てることができます。オンラインヘルプにある
パフォーマンスデシジョンツリーを使用することにより、パフォーマンスの問題の解決に役立つリソースを見つけることができます。

まとめ
パフォーマンス分析ツールとデシジョンツリーが公開される前は、実行時間の計測やトレースの取得、パフォーマンスベストプラクティスの確認、と様々なリソースへ、管理者や開発者自身がアクセスし、最適化を実施する必要がありました。現在は、システムパフォーマンスの分析に有用なツールが標準提供され、またディシジョンツリー、最適化のために有用なベストプラクティス情報は、オンラインヘルプに集約されています。
統計情報が保持されることにより、今までは難しかった、過去に発生した劣化の原因確認や実行時間のトレンドを確認することもできるようになりました。使用状況とパフォーマンスの監視、分析にSACの標準ツールをご利用いただけると幸いです。