
このブログは、2015 年 6 月 26 日に SAP ジャパン公式ブログに掲載されたものを SAP ジャパン公式ブログ閉鎖に伴い転載したものです。
執筆:高木 伸滋
読者の皆様、はじめまして。SAPジャパンの高木と申します。今回から主に旧 Sybase製品について最新の状況を発信してまいりますので、どうぞよろしくお願いします。
今年 5 月に SAP HANA プラットフォームの最先端技術情報をご紹介するイベント「SAP Tech JAM」が開催されました。今回は、その SAP Tech JAM のセッション「Re-Discover Sybase」でもお伝えした旧 Sybase 製品の状況をあらためてご紹介します。
SAP のデータマネジメントに対する方針は、① SAP HANA を中核とする、②データを保持・蓄積できるだけでなくデータを処理・活用できる、という 2 大方針があります。
SAP は従来から SAP Business Suite や SAP Business Warehouse を提供しており、社内データの管理に利用されてきました。
現在の SAP のデータマネジメントは、IoT や M2M などから得られるビックデータを含め、現在のビジネスにおける正確な判断と、将来のビジネス予測に活用することも視野に入れて設計されています。
現在も、旧 Sybase 製品は単独製品として、さらに SAP HANA プラットフォームを相互補完する製品として、計画的に開発とサポートが継続されています。
SAP が注力するプラットフォームは SAP HANA ですが、お客様のさまざまなニーズ、用途・ご予算・動作環境などに合わせて最適な製品の選択肢が、現在も引き続き用意されています。
SAP ASE は旧 Sybase におけるフラッグシップ製品であり、トランザクション処理に特化したディスクベースの RDBMS サーバーです。他社製品と比べ少ないハードウェアリソースで性能を出すことができ、システム管理も簡便であるため、平均 28% のTCO 削減が報告されています。*1
たとえば、米国ニューヨークの金融系ユーザーでは、1 日に1250 万件の証券注文を処理し、SAP ASE のトランザクション数に換算すると、3000 万トランザクションに相当していました。現在の注文処理数は 3000 万件にも達し、1 億トランザクション処理が行われています。これは 1 トランザクションあたり 1 ミリ秒(1000分の1秒)を切るマイクロ秒(百万分の1秒)台の速度に達しています。 このような高速かつ大量トランザクションを行うことは、エクストリームトランザクション処理(XTP)と呼ばれています。
SAPとの統合後もSAP ASE は安定的に実績を伸ばしており、昨年の集計では顧客数は30,000を超えています。特に SAP Business Suite のデータベースとしての導入数は6,580 に達しています。
また、クラウド環境にも対応し、パブリッククラウド(Amazon AWS, Microsoft Azure)での動作確認、 SAP HANA Enterprise Cloudでの導入実績があります。
米国ニューヨークにある大手証券クリアリング・ハウス(精算機関)では、SAP ASEでトランザクション結果を集計し、さまざまな分析レポートを作成されています。システム構成は、トランザクション用 SAP ASE サーバーのオフロードのために、別途レポート用の SAP ASE を設置し、トランザクションログを SAP Replication Server を使って複写しながら、約 1800 種類の定型集計作業を行っていました。しかし、顧客数と取引量の増加に伴い処理時間が自社で設定した SLA に合致しなくなったため、SAP に相談をいただきました。
集計分析アプリケーションは、2000 ライン以上の T-SQL コードであり、これらの書き換えは現実的ではなかったため、分析レポート用サーバーに SAP HANA を導入し、SAP ASE のアプリケーションに変更を行わずに、SAP HANA 上で処理を行う構成 – SAP HANA accelerator for SAP ASE をご提案しました。
測定結果として、ASE で従来 18 分かかっていた集計処理ストアード・プロシージャが、SAP HANAでは 1 分 12 秒と 15 倍に高速化され、10 顧客分の同時実行でも 5 分15 秒で完了することができるようになり、SLA を回復することができました。
データをカラム型で管理するため、大量のデータ検索も、ディスクへのアクセスを最少に留めることができ、通常のロー(行)ベース RDBMS での検索と比較すると、10 倍から 1000 倍高速な処理が期待できます。
独自のインデックス処理により、実データを圧縮してストレージに保存でき、ハードウェア構成の節約が可能です。
また、マルチプレックスと呼ぶ共有ディスクによるクラスター構成のスケールアウトに対応しており、独立した非定型クエリーを数十名~数千名のユーザーで同時に行うことや、複雑なクエリーを複数のサーバーで分散処理する DQP (Distributed Query Processing)にも対応しています。
製品は1990 年後半から出荷されており、20 年近くの実績があります。全世界で 2200顧客以上、設置数では 4500 以上であり、世界最大の導入実績を誇ります。
昨年、2014 年にギネス世界記録として、世界最大 12.1 PB の DWH と世界最高速 34.3TB/時でのデータロード性能の認定を受けています。 *2
*2ギネス世界記録 The Largest Data Warehouse
http://www.guinnessworldrecords.com/world-records/largest-data-warehouse
これまでの処理は、①データベースサーバーで対象となるデータを抽出する。②アプリケーションサーバーにデータを転送する。③アプリケーションサーバーで分析プログラムを実行する。という流れでしたが、ビックデータでは、②のデータ転送時間が膨大になり、トータルの処理時間が延長するため、In-Database 処理が注目されています。通常①の抽出作業は繰り返し行われる ため、②のデータ転送時間はますます無視できなくなっています。
現在でもこの機能を持つのは、ディスクベースのカラム型データベースでは SAP IQ が唯一の製品です。
ストレージシステム大手である EMC では、SAP IQ を使用した SAP Business Warehouse の NLS(ニアラインストレージシステム)として導入いただきました。これにより SAP Business Warehouse のデータロード時間を最大 60% 短縮、検索時間が半分になると共に、将来のデータ増加にも対応可能なシステムにアップグレードいただきました。
SAP IQ は、SAP HANA の機能を補完する一面を持つため、SP(サポートパッケージ)は同時期にリリースされます。7 月には、SP10 のリリースが計画されており、従来必須であった共有ディスク構成の制限を撤廃し、ローカルディスク (Direct Attached Storage)構成によるマルチプレックスがサポートされる予定です。これによりクラウド環境での SAN 設置・構成などのハードルが軽減され、より手軽に高性能SAP IQ システムの配置が可能になります。
また、超並列(MPP: Massive Parallel Processing)構成の SAP IQ 環境の構築が新たに可能になるため、IoT や M2M で収集される莫大なデータをより高速に処理する取り組みも始まります。
いかがでしょうか? 旧 Sybase 製品が単独製品と SAP HANA プラットフォームとのインテグレーションの両面で進化を続けていることを少しでもご理解いただければ幸いです。
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